妊婦に歯痛改善のためとはいえボルタレンは禁止!

歯痛は日常生活の中で経験することの多い痛みのひとつです。
歯痛が起こるメカニズムとして、何らかの原因によって歯の組織が損傷されると、組織を構成する細胞から発痛性物質のひとつである、プロスタグランジンが放出されて身体にある(歯の組織にもあります)痛みを伝えるセンサーを刺激することによって起こります。
こうした歯痛が起こった時に、痛みを抑える目的でしばしば使用される治療薬がボルタレンです。

ボルタレンは非ステロイド性消炎鎮痛薬に分類されており、解熱や鎮痛に使用されることの多い薬です。
ボルタレンの痛みに対する作用としては、発痛性物質であるプロスタグランジンを作るために必要な、シクロオキシゲナーゼという物質をブロックして、プロスタグランジンを作りにくくする作用があります。
この作用が結果として痛みを抑えることに繋がっています。

このようにボルタレンは歯痛への対症療法としても強力な作用がある有用な治療薬ですが、痛みに対して誰でも適用できるというわけではありません。
例えば対象が妊婦さんである場合は、たとえ歯痛があったとしても一般的にボルタレンは禁忌薬とされています。
その理由としては重篤な副作用を引き起こす危険性が考えられるためですが、もう少し触れますと、プロスタグランジンは発痛性物質として過剰に放出された場合には強い痛みを発信してしまう側面があります。
本来の働きとして血管の拡張や収縮、血圧調整や子宮収縮などを行う側面もある身体にとって大切な生理活性物質のひとつでもあります。
対してボルタレンの作用はこのプロスタグランジンの放出を抑制することになります。

妊婦さんがボルタレンを使用した場合、薬の成分が血流によって胎児へ移行してしまうと、胎児のプロスタグランジンの減少をきたしてしまうことに繋がります。
問題となるのは、プロスタグランジンが減少してしまうと、胎児の動脈管が収縮を起こして、心臓からの血液が大動脈ではなく肺へ流れ込み、肺高血圧を引き起こす危険性があります。
また腎臓の機能低下もきたしやすくなり、尿量が減少して羊水過少を引き起こす危険性もあります。
さらには、これらのような重篤な副作用に起因して流産に至ってしまう危険性があります。
したがってこれらの理由から、歯痛がある妊婦さんの場合は錠剤、座薬いずれを問わずボルタレンの使用はリスクが高いため、安易に使用することなく産婦人科医に相談しながら適切に対処していく必要があります。